大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和25年(あ)931号 判決

本店所在地

下関市丸山町一、七九五番地

防長度量衡株式会社

右代表者取締役

原田三

本籍

山口県厚狹郡船木町二七三番地

住居

下関市大坪町一丁目一、一〇四番地

防長度量衡株式会社代表取締役

原田三

明治三五年六月四日生

右の者等に対する法人税法違反各被告事件について、昭和二五年二月一三日広島高等裁判所の言渡した判決に対し、各被告人から上告の申立があつたので、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件各上告を棄却する。

理由

弁護人辻富太郞の上告趣意について。

かりに、所論のような事由に基いて、本件被告人会社の法人税確定申告書に、その事業年度の算定において、所論のような間違いがあつたとしても、それがために所論のように、右申告書の提出がなかつたのと同視することができるものではないのであつて、原判決は何ら論旨引用の当裁判所判例に違背するところはないのである。論旨は理由がない。なお、本件において、刑訴四一一条を適用すべき事由も認められない。

よつて刑訴四〇八条に従い、全裁判官一致の意見を以て、主文のとおり判決する。

弁護人辻富太郞の上告趣意

最高裁判所第二小法廷昭和二十四年七月九日の判決によると単純な不申告は所得税法所定の詐偽其の他不正の行為に該当しないことになつていて洵に正当な見解であるが、原審判決は右判例と相反する判断をしたもので破棄せらるべきものである。

第一審判決の認定した事実は、被告原田は被告会社の業務に関して法人税を免れようと企て昭和二十三年八月七日同会社の昭和二十三年一月一日より同年五月三十一日迄の事業年度分法人税確定申告書を下関税務署長に提出するに際し、同期間の同会社の所得金額は金二百六十七万八千五百十円であつたに拘らず、金十四万千五百四十九円であると虚僞の申告をなし以つて同事業年度の法人税金百三十八万七千五百九十三円九十五銭を免れたものであると云うにあるが、被告会社の定款所定の事業年度は六月一日より十一月三十日迄及び十二月一日より翌年五月三十一日迄である。而して企業再建整備法附則第二項によると、法人税法の適用については同法第四十条の二の規定に拘らず定款所定の事業年度によることが明かである。然るに、被告会社は右法条及び同法第二条会社経理応急措置法第一条法人税法第七条第八条第二十一条に依り右定款所定の昭和二十二年十二月一日より昭和二十三年五月三十一日迄の事業年度分の法人税確定申告書を所轄下関税務署に提出し、下関税務署も亦誤つて之を受理したものである。

しかし右申告は前記法律に違反していて無効であること言を俟たない。又被告会社の昭和二十二年十二月一日より昭和二十三年五月三十一日迄の事業年度の法人税確定申告書の提出がなかつたことは争のないことである。果して然らば被告会社は確定申告をしなかつたものであるから、被告会社には、法人税法第四十八条第一項所定の詐偽其他不正の行為はないこと明かである。然るに原判決は右第一審判決を正当として認容し控訴を棄却したもので前記最高裁判所の判例に相反する判断をしたものと云わねばならない。

仍て原判決は右の理由によつて破棄されるものと信ずる次第である。

以上

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例